今月15日まで神奈川近代文学館でやっていた、大乱歩展に行ってきました。
好きなんですよ、乱歩。
初めて出逢ったのは小学校3年生の時。
仄暗い学校図書館の片隅で…という、絵に描いたような邂逅でした(笑)。
忘れもしない、ポプラ社版少年探偵団シリーズの、「透明怪人」。
この表紙の絵がね、もう強烈だったんですよ。
いや、まず背表紙に書かれたタイトルに目が止まったんだよな。
「透明怪人」
なんだこれは?
そして本を引っぱり出してみると、あの表紙…。
もう一瞬のうちに決断しましたよ。今日はこれを借りよう、と。
乱歩の文体は、一見すると優しげで、語調が柔らかい。
です、ます調で、穏やかに語りかけてくるような語り口です。
ちょっとこれまで読んできた本より文字が小さいけど、これなら読めるかもしれないと、小学三年生だった私の警戒心を解きました。
家に持って帰ると、母が反応したのを覚えています。
「乱歩じゃない」と。
それまでの私は、著者名に注意を払うということを知らなかった。
そう言われて気づくと、タイトルの横に「江戸川乱歩」という文字が並んでいる。
「乱」の字は、当時まだ習ってなかったんじゃなかったか。
母がいなければ、まず正しく読むことはできなかっただろうと思う。
でも私は幸いだった。その文字に気づいたと同時に、それは「えどがわらんぽ」と読むのだと知ることができたから。
江戸川乱歩。
本も怪しい雰囲気なら、作家の名前もなんて不思議な響きなんだろう。
当然その頃の私は、ポーの名前など知るはずもない。
江戸川乱歩という、変な、怪しげな響きの名前は、本の内容とあいまって、私に強烈な印象を残しました。
教室に持っていくと、男子が反応しました(笑)。
「おれ、今『怪人二十面相』を借りてる」と言う子もいて、次にそれを借りたいから、返却する時は教えてちょうだいという約束まで取りつけました。
とにかく、今でも忘れられないシーンは、「銀座のはずれの骨董屋のショウウィンドウを覗いている怪紳士」の登場するところです。確か挿絵があったと思う。
顔は、蝋でできた仮面で隠しているのです。
銀座の骨董屋…仮面をつけた紳士…
なんというゾクゾクするシチュエーション!
乱歩の作品にはよく、「銀座」や、「世田谷のさびしい屋敷通り」や、「洋館」、「仮面」などが出てきます。
それらのものが醸し出す、独特のムード。
当時の私は自覚していなかったけれど、今の私の趣向を形作る土台になったのは、あの作品群かもしれません。
乱歩の大人向けの作品(というか、本来の作品)を読んだのは大学に入った頃でした。
好きな作品は、「押絵と旅する男」とか「鏡地獄」みたいな短編に多いかな。
少年物では、「青銅の魔人」、「大金塊」あたりが忘れられないですね。
大乱歩展の話をしていたんでした。
きっと乱歩は、とっても几帳面で、収集癖が半端じゃなくって、整理魔で収集魔だったんだろうな…と思えるコレクションの数々でした(笑)。
そして乱歩は……
Jの匂いがする。確実にする!
子供の頃の私は自覚が無かったが、乱歩に出会い、はまった時、今日の運命は定められていたのかもしれない…と思いました^^。
PR